外に猫が居ない世界を作る

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みんなのきふでは、寄付による支援活動以外にも保護団体の皆さんの活動や保護猫カフェへの取材など、みなさんが普段見ることの少ない活動の詳細や、裏側をお伝えします。

今回は、東京キャットガーディアン代表、山本葉子さんにお話を伺いました。

【東京キャットガーディアン】

2002年代表の山本さんが自宅で約30頭の保護を開始したことをきっかけに、ボランティア活動を開始。地域のボランティアたちと役割分担をしながら、里親探し・不妊去勢手術・啓発活動を経て、2008年4月から任意団体としての活動をスタート。同年12月には、野良猫の不妊去勢手術と行政から受け入れた猫のケアのための病院運営、常設の猫の譲渡会場として開放型シェルターを、(猫カフェスペース)国内初の運営形態として立ち上げる。

■最適な環境を提供し、どんな状態の猫でも譲渡を諦めない。

東京キャットガーディアンでは、これまで13年間の活動の中で8000頭以上、月平均50〜60頭、年間700頭ペースで譲渡し続けているという。今回取材に訪れた、大塚の公開型シェルターだけでなく、ケアシェルター、病院施設、猫付きシェアハウスなど、状況に分けた施設を複数用意し、保護とその後の成育環境整備のどちらにも注力していることがわかる。

 特にケアシェルターでは、一般的な譲渡が難しいと判断される猫や、人でいうホスピスのような終末ケア、病気などの理由により日常的な医療・介護が必要な猫が処置を受けられるようになっている。


現在の活動状況について代表の山本さんはこう語る。「私達は、最後の瞬間まで譲渡は諦めないというスタンスで里親を探しています。どの施設にいるかに関わらず、基本的にはHP上で里親募集となっており、施設の見学などを通じ、日常的なケアが必要だと承知した上で譲渡に手を上げた方もいらっしゃいます。これからも、適正な飼育者の皆さんに譲渡していきたいと考えています。」

※写真提供 東京キャットガーディアン

■システムを維持できていることが嬉しい

13年間の活動の中で最も嬉しいことや苦労していることを伺ってみた。

・嬉しいと感じていること
「譲渡というのは、誰でも良いわけではなく、”適正な飼育者”へ譲渡することが求められます。 捨てるといった行為は人間の都合でしかなく、残念ながら、世の中には「飼育しては行けない人」がいることが事実です。私達が飼育者として認められる方たちを選びながらも、人々や行政から望まれている仕組みを提供できていること、またその仕組を利用し、13年間という長い間、成果を出し続けられていることが一番嬉しいと感じています。」

・苦労していること
「一度作った仕組みを続けていくことは出来ますが、活動の中で段々と必要な事は増えていきます。 直近の課題で言いますと、高度医療や高額医療の提供に向けて体制を整えたいと考えています。ですが、より多くを助けるために一頭に高額な費用を出してもよいものかという考えが無いわけでもありませんので、葛藤しています。また、現実的には金銭面的な負担が大きく、現在構想を練っているところです。」

■保護団体への助成は存在しない現状

動物保護を行う団体の活動資金に関しては、国からの助成金は存在していないのが現状だ。野良猫への不妊去勢費用を支給する制度は存在しているが、これは個人が受けられる制度となっており、団体では受けられない。同団体ではECサイトでグッズ・餌・オーナーグッズを販売や、その他の事業収益と寄付で活動を行っている。
 活動資金や助成金について「地域によって助成金の有無に違いはありますが、仮に市や区からの助成金があったとしても、私達の規模になると事業を支えるほどの規模にはなりません。そういった制度が出来るまで待つことも出来ないので、複数の事業を仕掛け、資金源としています。不妊去勢の費用についても行政発信で始まったことではなく、地域の方が、交渉に交渉を重ねて制度化された場合が多いです。ですが、活動費は含まれないので、個人で保護活動を行っている方の費用は実費が当たり前になっているのが現実です。」という現状への理解を求めた。

■殺処分数は手柄争いでは無い。

現在は行政施設での処分を「殺処分」と呼んでおり、仮に行政が「今後動物の受け入れ対応をしない」と言った場合、ある意味殺処分はゼロと言えなくはない。令和元年(2019年)の物愛護法改正時に、35条の改定が行われ、「都道府県等は、所有者の判明しない犬又は猫の引取りをその拾得者その他の者から求められたときは、引取りを求める相当の事由がないと認められる場合には、その引取りを拒否することができることとする。」という条文が追加された。それ以前は拒めなかった受け入れを、行政側が拒否出来る事になった。これにより、そもそも持ち込まれる頭数が減少した経緯がある。

だが、いくつかの都道府県で言われている、殺処分ゼロの実情は異なるようだ。
先述の令和元年の情報によると、環境省では、動物の死亡に関して3つの区分を設けている。

①譲渡することが適切ではない(治療の見込みがない病気や攻撃性がある等)

②分類①以外の殺処分(譲渡先の確保や適切な飼養管理が困難)

③引取後の死亡

②以外の処分にや死亡については、殺処分と見なさないという事であり、東京都では②の部分がゼロになったということを発表したのだ。

「殺処分ゼロを東京都が達成したからといって、近隣の都道府県で競うようなことではありません。重要なのは、動物達をどう終の住処に繋げていくかということです。競うのであれば、そこを競っていただきたいと感じています。殺処分についても、内容としてはこうだったと説明していればまだ納得出来るが、殺処分はしているが、”これは殺処分に当たらない”となると、それは違うのでは」と山本さんは、疑問を呈した。

■犬と同様に外に猫が居ない世界を作る必要がある

殺処分ゼロというのは、公衆衛生や環境保全にも関わる問題だと山本さんは主張している。「出生のコントロールが機能していない地域での大繁殖は、衛生面や近隣の住民感情を損なう可能性もある。特に、猫は繁殖力が大変強い動物です。バースコントロールを計画的に行い、犬と同様に外に猫が居ない世界を作ることが重要であると考えています。」
 確かに、近年では『野良猫・野良犬』を見かけること自体、少なくなったのではと感じている方も多くいるのではないだろうか。この背景には、個人・保護団体などの精力的な活動、人々や社会的な意識の変化が大きく関係していることは間違いない。
※バースコントロール‥‥産児制限・受胎調整

■ペットを飼いたいと考えている方へ向けて

お家時間の増加やコロナ禍の影響もあり、ペットを飼う人や飼いたいと考えている人は多いのではないだろうか。そういった方に対して、「今は何でも調べられる時代になっています。大切な事は、自分で調べて比べられるかということ。しっかりと努力出来る飼い主は、一次診断が出来るようになる。それが良い飼い主だと考えています。」とメッセージを送った。

■〇〇円あったら出来ること

同施設では、無理のない範囲での寄付を持続的におこなっていただきたいとの思いから、HP上に金額によって出来ることの指標を掲載している。

皆様のご支援でできること
出典:東京キャットガーディアンHP

■最後に

保護猫カフェは予約無しで来店出来るため、いつでもかわいい猫達との触れ合いが楽しめる場所となっており、また、YouTubeチャンネルを開設し、動画の配信もしています。物資の支援・寄付などは常時受け付けており、詳細はHP上で確認することができますが、「無理のない範囲で支援していただけると嬉しい」と、にこやかにメッセージを送っていました。

ライター 山本 恭平